第16章 複雑に絡む
‐りんside‐
ちょっと昔の話をする。
私と鉄朗は、私が勤めていた店で出会った。
私はキャストで、鉄朗は客。
うちの常連さんに無理矢理連れて来られた感じだった。
しかも、その常連さんが鉄朗は失恋したばかりだから気晴らしに連れてきたとか、勝手に彼の個人情報をバラした。
たまたま、フリーで席に着かせて貰っていただけなのだけど。
話のきっかけになりそうだったから、慰めてやるつもりで、それについて聞いてみた。
彼女と別れた理由は、他の女と同居しているから。
それは、その女を独りにしたくなくてしている事で。
彼は、家族だと思ってる人だから、簡単に縁を切りたくないらしかった。
そんなに想ってるなら、その人と付き合えばって意見したけど。
それは、実行して失敗済みだった。
気まずくなって、それ以上は会話せず。
その日は、一緒に来た常連さんを置いて帰ってしまった。
一応は、店用の番号とアドレスを書いた名刺を渡して見送ったけど。
どうせ、連絡なんて来ないと思ってた。
それなのに、翌日には連絡が来て、何故か懐かれてしまっていたのが判明する。
彼曰く、同居をしている元彼女の話をしても引かなかった女は初めてだったらしい。
他の人に、それを知られると大体は未練あるんじゃないかって疑われて、お互いに依存しているようで気持ちが悪いと、否定から入られるそうだ。
確かに、そう言いたくなる気持ちも分かる。
だけど、私からしたら、血の繋がりがなくて、結婚している訳でもない人を家族と同等に思える。
そんな情の深い彼を否定したくなかった。