第16章 複雑に絡む
‐りんside‐
イライラするのは、りらの方だとばかり思ってた。
だけど、りらという人間を知れば悪気はないのは分かるし、ある意味で子どもみたいな正直さがあるだけ。
みつは、その逆だ。
ひねくれた思考を持って、本当に知りたい情報を隠したまま、掠め取ろうとしている。
人を挑発すれば、怒って感情的になれば、勢いで言うだろう事を読んでいる。
どっちがタチが悪いのかなんて、一目瞭然だ。
「ごめん、悪いけど、みつは帰って貰える?」
分かっているのは、みつが私と月島くんに何かあって欲しいという事。
それに関係しそうな情報は渡したくない。
イラついて、ボロを出したら気付きそうだから遠ざけた。
「…なんか、変な事聞いちゃったみたい。ごめんね。じゃ、私は帰るから。」
意外にもあっさりとみつが引いて、帰っていく。
残されたりらは、どうすれば良いか分からなくなったみたいで、みつの出ていった扉を眺めていた。
「…で?本当は何が聞きたかったの?」
こっちなら、何を知られても構わない。
きっと、簡単に人の情報を周りにバラしたりしないだろうし。
りら自身だけでは、その情報を生かして何かを企むなんて出来ないだろう。
だから、欲しかった情報が何かを掴んでおきたかった。
「…この人。黒尾鉄朗さん、ですよね。」
迷ったような間の後、指が置かれた写真。
そこには、私と昔の恋人が写っていて。
その名前を、確信を持った声で告げられた。