第16章 複雑に絡む
質問を受け付ける意思を示すのは、答える気があるからだろう。
嘘を吐いたり、隠し事をしたりするかは別として。
それなら、聞いてみようと口を開き掛けたけど、みつの手が前に出てきて制止される。
「お姉さん、夜の商売してたんだね。格好からして、キャバクラかな?」
私の言葉を止めた理由を理解するのに数秒と掛からなかった。
これが、遠回しに聞くというやつなのだろうと感心する。
どうにか真相に近付けてはくれると思って、話をするのは任せる事にした。
「そうだけど、それが何か?」
「いや、納得しちゃったなって。この家、普通のOLさんが住むには、家賃高そうだから。」
「あぁ…そういう事。でも、賃貸じゃないから家賃は払ってないわよ。一括で買ってるから、ローンも無いし。」
思ったより、回りくどい事をしている。
家の話から、どうやって写真の人との関係を聞く気だ。
私達が知りたい事から離れていく気がして、視線だけをみつに向けた。
みつは、安心して、とでも言うように笑って。
「そうなんだぁ?お客さんにでも買って貰ったの?色恋営業とかすると、その気になっちゃうオジサマ居るもんね。」
軽い口調で、挑発のような言葉を吐いている。
案の定、彼女は苛々を表すように眉間に皺を刻んだ。
「…何が、言いたいの?」
「ん?そういうお仕事してて、こんなイイトコ住めるなんて、結構人気あったんだなって。
お金持ちなオジサマじゃなくても、こんなイケメンとお近付きになれるなら、私もやってみたいからさ。」
「アンタに務まるような仕事じゃない。」
一旦は上手く、写真の人に話の方向を向けたと思ったけど。
やり方が問題だったみたいで、完全に彼女を怒らせてしまった。