第16章 複雑に絡む
思えば、不思議な部分はあったのだ。
普通の感覚が分からない私に、度々苛ついていたのに、一番異常ともいえる部分は、すんなり納得していた。
それは、あのシェアハウスの事だ。
物事を理解して貰う為に要点を纏めるのは苦手というか…。
上手く纏めきれなくて、また苛々させてしまうと思った。
だから、かなり詳しく話したと思う。
普通を重んじるならば、継続的に若い女が一人の状態で同居をしていた事自体を異常と感じる筈だ。
男ばかりの環境の中に女が一人しか居ないというのは、どれだけ危険な事なのか。
きっと、それを経験した私じゃなくても、分かる。
その部分を、受け入れられたのは、彼女が知っていたから。
血の繋がりなんて関係なく、家族のような存在になれる事を。
そして、その絆は、血の繋がった家族とのものより、強い場合があるという事を。
だから、疑問にも思わず、否定をしてこなかった。
どうして、そんな形の絆が存在すると知っていたのか。
彼女の過去が、私達の関係に、複雑に絡んでいた事を私はまだ知らなかった。