第15章 お弁当
いきなり口を挟まれて、どう反応したら正しいのか分からない。
私の普通じゃないだろう行動が、昨日から彼女をイラつかせているだろう事は分かっていたから。
「お姉さん、料理するの?」
「まぁ、独り暮らし長いし、ちょっとは出来るよ。」
「んじゃ、どうぞ。」
こっちが迷っている内に、みつが勝手に答えている。
私に許可を取るでもなく、手の中から紙を抜き取って渡してしまった。
料理は好きだし、人に食べて貰えるレベルのものを作る自信はある。
その自信が無ければ、この店を手伝っているのにお客さんに失礼だ。
だけど、人様に教えてやれるかっていったら話は別で。
家族にならともかく、赤の他人にレシピを渡す程のものではない。
色々と考えても、今更取り返そうと思っても無駄なようだ。
紙を受け取ったその人は、興味津々といった感じで文字を眺めている。
「…りら、ごめん。文字だけの説明じゃ、やっぱ分からないわ。」
一枚目を読み終わったであろう後の感想はこれで。
それなら、レシピを返して貰えるだろうと思って、手を出したけど、違ったようで。
「これ、見ながら作るの、りらに監督して貰うって、出来る?勿論、間違ったりしたら指摘して欲しい。」
予想外過ぎる頼み事に、また答えを迷う。
「あ、それなら味見役に私も同行したいな。姉ちゃんの味との違い、客観的に感想言えたら分かりやすいでしょ?」
「あぁ、それもアリね。いつなら2人はお暇なの?」
そして、先と同じく勝手に答えてくれたみつによって、料理の監督をする事が決定してしまった。