第15章 お弁当
誰に店の事を聞いたのだろうか、とか。
わざわざお礼を言う為だけに来たのだろうか、とか。
気になる事は多々あれど、知り合いと言うには少し遠いような方相手に話し掛ける事は出来ず。
それでも気になるから、つい視線だけは何回も向けていた。
「りら、そんなに見られたら私に穴が空くよ。睨まれてるみたいで怖いし。」
そのつもりはなくても、表情の乏しい私が見詰めるという行為は、そう取れてしまうらしく慌てて頭を下げる。
「すみません。」
「いいよ。貴女、ちょっと変わってるのは昨日の件で分かってるから。」
その変わっている私を、すんなり受け入れている辺り、この人も変わっていると思った。
お客さんとはいえ、何故だか昨日は敵意を持たれていた気がするし、会話の相手ならかおるさんがしてくれていたようだし。
自分が気になる事云々は置いておいて、他のお客さんの相手をしていると、赤葦さんとみつがやってくる。
「あれ、昨日のツッキーくんの先輩。こんばんはー。」
「どうも、こんばんは。」
2人も、その人が居る事には驚いていたけど、順応性は高いようで。
普通に挨拶をして、知り合いだから当たり前といった顔で隣の席に座っていた。
それからの3人の様子は、特に変な事は無く。
まるで、元から知人だったかのように会話している。
いや、私からすれば、昨日知り合ったばかりの人と、そこまで打ち解けているのは、変といえば変な事だけど。
険悪ではないし、一人で来ているお客さんの相手をしてくれるのは、有難いと思った。