第15章 お弁当
‐りんside‐
月島くんが案内してくれたは良いものの。
本人は、同居人が五月蝿いからって帰ってしまうし。
この、チェーンじゃない個人のお店みたいな雰囲気の場所には中々入れなくて。
数分悩んだけど、案内までさせて、やっぱり入るのを止めただなんて、嫌味を言われそうな気がしたから、覚悟を決める。
開いた扉の中には見知った顔があったから、少し安心して普通に喋る事が出来た。
「…りら、今朝は有難う。」
「お約束した事をやっただけですので。…お飲み物は?」
席に着くと、りらが箸とかオシボリを出しに来て、丁度良いから本来の目的を果たしておく。
相変わらず、愛想のない淡々とした言葉が返ってきたけど。
このコが明るく喋ったら逆に気持ち悪いとすら感じそうだから、別にいいと思えてきた。
会話を続ける気もゼロだったようで、すぐに切り替えて注文を取ってくるのも、相手がりらだと思えば予想の範囲内で。
「じゃあ、ビールで。」
「畏まりました。」
こちらも、普通に注文だけして返す。
知り合いに言われると、堅苦しくも聞こえる返事を置いて、りらはカウンターの中に入っていった。
すぐに出てきた飲み物と、お通しと。
それから、何品か頼んだ料理が出るまでにも然程時間は掛からず。
若いけど、女将さんらしき人も可愛らしいし、会話のテンポが心地好いし、料理は美味しいし。
このお店、リピート決定だな、なんて考えながら一人酒を楽しんでいた。