第4章 お泊まり
相変わらず堅いな、なんて言いながらも嬉しそうにしている木葉さんと一緒に部屋に行く。
練習とか言って私に鍵を開けさせたけど、子どもじゃあるまいし、使い方くらい分かる。
それでも、やっぱり嬉しそうな木葉さんを見ていると私まで嬉しくなってきたけど。
「…お邪魔します。」
「タダイマ、で良くね?」
「ここに住む訳ではないので、そういう訳には…。」
「あー…。そうじゃなくて、さ。」
何か、気に食わない事があったようで。
また、頭を掻いて顔を逸らしている。
「…俺も、アイツ等が羨ましいんだよ。」
ボソりと、小さな声で呟かれた言葉の意味が分からなくて、目を瞬かせた。
「うん。なんとなーく、分かってたが、お前、一から十まで説明しねぇと分からねぇタイプだな?」
「…はい。」
人の感情が、あまりよく分からない。
ちゃんと言ってくれないと裏の意味まで読むなんて、私には難しい。
その上、自分で深読みしようとするとマイナスの事しか考えられない。
素直に頷くと、手を引かれて奥の部屋に連れていかれた。
「俺ね、お前の顔を正面から見てっと、恥ずかしいコト言えなくなんの。だから、ここ座ってくんね?」
ベッドを背凭れにして、座った木葉さんが示した場所。
足を広げた間を手の平で叩いていた。
そこに座れ、って。
顔を見てたら喋れないなら、寄り掛かるように座るって事だろうか。
その体勢は私の方が恥ずかしいけど。
従わないと話が進まない気がしたから、その場所に腰を下ろした。