第4章 お泊まり
その後も、何故か私達の事を聞かれ続けるだけの飲み会が続き。
2時間もしない内に解散になった。
何の為に、かおるさんを誘って飲みに来たんだ、木兎さん。
お互いを知る為じゃなかったのか。
これなら、途中で帰ってしまった方が良かった気がする。
店の手伝いよりも、飲み会での質問攻めに疲れて、木葉さんと2人きりにやっとなったと言うのに、会話が出来ない。
無言のまま、到着したマンションの前。
「熊野。」
ここまで、私の疲れを察知して話し掛けてこなかった木葉さんの声が聞こえて、顔をそちらに向ける。
「プレゼント、な。」
何かを掴んだ形で差し出された手。
部屋に入ってからにすれば良いのに、何でこのタイミングなんだ。
意味が分からず、手を出せない。
「変なモンじゃねぇから、受け取って。」
それを言われて、慌てて向けた手の平に、小さな金属の音を立てて乗せられた物はリボンの付いた鍵だった。
「俺ン家の合鍵。店から近ェし、遅くなる時は泊まってけ。深夜勤の時は居ねぇが、自由に使っていいからさ。」
照れ臭そうに頭を掻いている姿に、また脈が早くなる。
ここに来ていい証を渡された事が凄く嬉しかった。
プレゼントを受け取るのは慣れていないけど、こういう時に使う言葉は知っている。
「有難う御座います。」
手の中に収まる鍵を握り締めて、頭を下げた。