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【HQ】繋がる縁の円

第15章 お弁当


‐月島side‐

あの大量の弁当を、女性である彼女1人で食べられるとは思っていない。
どうせ、僕以外の社員とは会話もろくに出来てないんだから、こっちに回してくると思っていた。

だけど予想外に、上司が近付いて、料理を少し持ち去っている。
しかも、それを褒めた上に他の人にも勝手に勧めて、すぐに料理は空になっていた。

普段は、男よりも仕事が出来る女である彼女を煙たがっている奴等まで、近くに寄って媚びている。
胃袋を掴むって、こういう事なんだ。
妙な納得をしながら、いつもなら食事の時は自分の所に来てた筈の彼女が、他の男に囲まれる光景を眺めている内に昼休みは終わった。

午後の仕事は、昼食を抜いたからなのかやる気が出なくて。
終業のチャイムと同時に席を立つ。

「あ、月島くん。ちょっと…。」
「なんですか。終業時間過ぎたんで、帰りたいんですケド。」

呼び止められて、返した声は低く、苛立ちを表していた。
お腹減ったからって、こんなにイライラしたのは初めて。
もう、それを隠す気になんかならなくて、声の主を睨む。

「あ、なんか、ごめん。仕事の話ではないから、歩きながら良いかな?」

少しだけ怯えたように顔が強張った。
それでも逸らさない眼には僕が映っている。
何故か、イライラしていた気持ちが落ち着いてきたから、話を聞いてあげようと思えた。
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