第15章 お弁当
‐りんside‐
ホンット、何なの、あのコ。
バカじゃないの?
お金を受け取らせたいが為に、言っただけだって分からないかな、普通。
いや、あのコはちょっと普通じゃないって周りに言われてたな。
それでも、他の人は気付いてたんだろうから止めなさいよ。
忘れていたのは、彼女が会社の最寄り駅を知っている事。
昨日の、覚悟しといた方が、っていうのは完全にこれの事。
あんな事を言っちゃった事とかを後悔している内に、淡々と挨拶して、この大荷物を渡してどっかに行ってしまった。
呆気に取られて、返す事も出来ず見送ったのを、また後悔している。
だって、これ、多すぎやしませんか。
どう考えても、1人で食べる量じゃない。
取り合えず、机の上に広げてみたけど。
そのスペースがほぼ埋まるサイズの、弁当を食べると思われたのか?
いや、そんな事は無かった。
取り分け用みたいな、紙のお皿と割り箸まで付いている。
会社の人と仲良くランチしろってか。
私が孤立してるの、知らないからこんな事をするんだろうな。
誘ったって、誰も食べてなんかくれないわよ。
1人で食べられるだけ食べて、残した分は捨てると決めて、料理に箸を付けようとした時だった。
「凄いお弁当だねぇ。君にこんな才能があったなんて。」
後ろから、部長の声がしてくる。
昨日の土下座を見られているかも知れない気まずさがあって、振り返れなかった。
こういう状況に慣れなくて、何と返せばいいのか分からず黙っていると、紙皿に伸びてきた手。
「こんなのまで用意してるのなら、皆に振る舞うつもりだったのかな。お相伴に預かってもいいかい?」
「…え、えぇ。どうぞ。」
ちょっと苦手な人ではあるけど、捨てるには勿体無い料理を減らせるなら丁度良い。
頷いて返すと、何品かの料理を取って席に戻っていった。