第15章 お弁当
‐りんside‐
本当にダメだ。
このコとは、本質的に合わない。
見れば見る程、話をすればする程、腹が立ってくる。
顔を見てたくないから、早く帰りたいけど、出したお金を受け取るのは、意地でもしたくない。
でも、押し問答していたら帰れない。
「…じゃあ、こうしよう。りらは料理が上手いのよね?余ったお金で、私のお弁当作ってくれない?」
別にこのコの料理を食べたい訳じゃない。
だけど、使い道を示したお金なら受け取るかもしれない。
納得してくれたのか、それ以上は何も言わなくなった。
どうせ、この後も飲むなら、忘れてくれるかも知れないし。
覚えていたって、私の自宅とか知ってる訳じゃないから、届けに来れる訳はないし。
この場から、やっと離れられる安心感で、何かを忘れている気がするけど。
忘れるくらいなら大した事じゃないだろうと思って、出入り口に向かう。
「お客様のお帰りでーすっ!有難う御座いましたー!」
居酒屋特有の、威勢の良い挨拶が聞こえて、そのまま見送りに来てくれたのは、りらの彼氏で。
店から出た所で、挨拶だけは返そうと振り返る。
「ご馳走さまでした。」
「有難う御座いました。…ちょっと、いい?」
店員としての仕事なら、ここで終わりの筈だ。
それなのに止められたから、不信感で眉を寄せた。
「お姉さん、嫌いな食べ物とか、ない?」
「…好き嫌いは、しない方だけど…。それが、何か?」
「明日の朝、覚悟しといた方が良いぞ。」
やけに真剣な顔で忠告されても、意味が分からない。
それを聞く前に、店の方へと戻られてしまったけど、明日の朝には判明するだろうから、あまり気にせず家に帰った。