第15章 お弁当
妹が何かを企んでいる。
そうで無ければ、この人を連れて食事なんて言い出さないし。
「姉ちゃんが口を挟むと話が変な方向にいくから、私が喋ってる時は突っ込まないでね。」
こんな、忠告をわざわざしてこない。
不審に思って何か言ったところで、勝てる気がしないし、黙って従っておいた。
予定とは違う面子で向かったのは、当初の目的だった秋紀の勤め先で。
何故か、ホールの仕事をしていた事に驚いたけど、向こうは向こうで、この女性を連れてきた事に驚いている。
「あれ?昨日の、月島の…上司サン?」
「いえ、先輩ではありますけど、同じ平社員なので同僚です。」
「そうですか。月島、生意気だから大変でしょう?」
「…彼は、とても優秀ですよ。助かってます。」
でも、この人の事は知っていたみたいで、普通に何やら会話をしていた。
その為、何でホールにいるかを問う事は出来ず、案内された席に着く。
「…で、そちらが聞きたい事は何となく分かってるんだけど。交換条件として、こっちも質問していい?」
飲み物の注文後、秋紀が去ったのを見計らって仕切り始める妹。
「お姉さん、さ。ツッキーくんの事、好きなんじゃない?」
女性の返事の前に、勝手に話を進めて、妙な事を聞いていた。
妹の顔は、どこか確信している。
だけど、それこそ、今さっき知り合ったばかりの私達に言うような事じゃない。
そう、言うような事じゃ、ない。
確かに、言葉では何も返らなかったけど、女性の顔は真っ赤になっていた。