第4章 お泊まり
周りに笑われるような事を言ったのならば、木葉さんは傷付いているんじゃないか。
慌てて顔を確認する。
私の嫌いな、苦しそうな顔はしていなかったけど、心底不思議そうに考え込んでいて。
「…その、変人にどうして惚れたんだよ、お前は。」
当たり前のような疑問が向けられた。
「傍に居てくれたから。」
これには、即答。
独りには慣れていた筈なのに、来てくれなかった日は、淋しくて。
会いたいと、思っていた。
「俺の彼女が可愛すぎて辛い…。その顔、反則。」
表情に、何か変化があったらしい。
木葉さんは、隠すように額に手を当てて顔を逸らした。
「なんだよ、お前等ー!ラブラブか!羨ましいぞ!」
「付き合いたてって、そんなもんでしょ。案外、お互いを理想化し過ぎてて、すぐに別れるかもよ?」
「あぁ、それはありそうですね。りら、別れたら俺の所に…。」
「いや!赤葦よりは俺だろ!」
今度は意地の悪い事を言い出した人達。
木葉さんは意外にメンタル弱いから、泣いたりしないか、なんて失礼な事を考えていた。
「ねーよ。少なくとも、俺は熊野に理想押し付ける気ねぇし。」
だけど、アルコールの入っていない木葉さんは、簡単には折れないようで。
テーブルの下、他の人には見えない部分で手を握られる。
「初めが変人クラスに思われてたんなら、それ以下になんのも難しくね?…つー訳で、誰にも渡さねぇから。」
指を絡めて、強く握られた手は、決意を表してくれているようで。
嬉しくて、その手を握り返した。