第15章 お弁当
何で、泣かれているのか分からない。
普通なら、月島くんに意地の悪い事をされたからだろう。
でも、さっきまでの気の強そうな様子を見てたら、それが理由とは思えない。
私が何とかしてやれる問題じゃないし、家族と待ち合わせているのもあるし。
彼女の知り合いは月島くんだけなのだから任せようと思った。
「月島くん、何とかして。」
「何で僕が…。勝手に泣いちゃったんだから、何もしようがないデショ。」
声を掛けると、本気で嫌がるように眉を寄せられる。
2人を置いていったら、追い討ちを掛けそうな気しかしない。
諦めの息を吐いて、親の方に連絡しようとスマホを取り出すと、メッセージが入っていた。
内容としては、弟のワガママによって店を変更したという、今の状態を考えると有り難いばかりの事で。
それなら行かない、とだけ返信しておいた。
時間が作れたのは良いとして、だ。
問題は、修羅場の後に土下座、更に泣きだす、目立つ事のオンパレードで、人目が本格的に気になる事だ。
このまま、外に居ても人が集まってくるばかりで、何の解決にもならない。
まぁ、泣いている理由を聞いても理解は出来ないだろうけど、取り合えず移動を示すように、彼女の手を掴んで歩き出した。
「…え?ちょっ!えーっと?」
「何が言いたいんですか。」
「あ、えっと…。何で、どっか連れて行こうとしてんの?」
「何で泣いてるのか、聞きます。ここだと目立つので、お店にでも入りましょう。」
「いやいやいや、何で?」
慌てたような声が聞こえて僅かに振り返ると、驚いたのか涙は止まっていて。
移動する意味を返しても、理解して貰えなくて。
余計なお世話を焼いてしまったのかと後悔して、手を離した。