第15章 お弁当
‐月島side‐
元々、飲み会とか好きじゃないのに、りらの為だと思ったら行ってしまった。
でも、そのりらは、自分の彼氏の世話でいっぱいいっぱいだったみたいで。
視線を、僕に向けたのも数回だけ。
今でも彼女の視線が欲しいなんて、馬鹿みたい。
昨晩の事を思い出し、溜め息を吐きながらの通勤中。
当分の間は、りらに会いたくない。
会ったら、また視線を求めてしまう。
上手く言い訳でもして、来週の食事当番は手伝わなくて良いと、連絡をしようと思っていた。
なのに、なんで、居るの。
しかも、僕の会社の最寄りだよ、ここ。
こんな通勤時間帯に来られたら、迷惑だって分からないかな。
眉を寄せて、嫌がっている顔をして見せても、りらは構わず寄ってきた。
「月島くん、これ。」
そして、差し出されたのは紙製の使い捨て弁当箱。
「栄養補助のビスケットばかりじゃ、良くない。ちゃんと食べて。」
胸元に押し付けるようにされて、仕方無く受け取る事にする。
今は、僕だけを映している瞳。
少しでも長く、そうしていて欲しかったけど。
「りら、あんま引き止めんなよ。月島だって、これから仕事だろ?」
聞き覚えのある声が聞こえて、呆気なく、彼女の視線は木葉さんのものになってしまった。
「木葉さんまで、何で居るんですか?」
「俺の職場の最寄りも、この駅だっての。りらが月島に会いたいっつーから、通勤兼デート。」
「他の男に会わせるデートで良いんですかぁ?」
「お前等は、俺と違った意味でりらの特別なんだから、許すしかねぇだろ?」
悔しくて、つい噛み付いたけど、木葉さんは簡単には折れてくれず。
言い合いを始めた僕達を、不機嫌な笑顔でりらが眺めていたから、それはすぐに止めた。
「…こんな事、もうしなくていいよ。りらに世話して貰わなくても、食事くらい出来るカラ。家にも、もう来ないで。」
りらと居ると視線を求めてしまって、落ち着かなくなる。
それなら、りらと会わなければいい。
極端な解決策だけど、今の僕にはそれしか出来なくて。
食事当番の件もついでに断ってしまうと、2人から離れて会社に向かった。