第15章 お弁当
昨晩、黒尾さんから電話が来た。
月島くんの代わりに料理を作った事を、甘やかしてるって怒られた。
確かに、家事なんかは覚えておいて損は無いし、出来ないなら出来ないなりに努力はしてみるべきである。
納得出来たから、次からは多少手付きが危なくても、本人に少しずつ覚えて貰えるように手伝う話で片は付いた。
でも、たまには作らせて欲しいってお願いした。
私はやっぱり、同居していた皆の家族でありたい。
せめて、ご飯を作ってくれる特定の人が出来るまででも良いから、私の料理も食べて貰いたい。
それを説明したら、月に1度はかおるさんの店に来てくれるって話になった。
かおるさんなら、理由を話したら皆のご飯を作るのくらい、許してくれるからって。
私は秋紀のものだから、他の男のご飯を個人的に作るのは駄目だって説教も。
多分、黒尾さんは正しい。
だから、店に来てくれるだけでも喜ばしい事で。
早速、本日予約を入れてくれていたから、張り切って食事を作っていた。
「りらちゃん、ご飯作ったら今日は上がって良いよ。小上がり、皆で使ってくれるなら、私が相手するのカウンターだけだし。皆と一緒に楽しんで。」
かおるさんの優しい気遣いもあったけど、それは断る。
勿論、元同居人の皆は大切なんだけど。
今の私が大切にしたいのは、そこから広がった出会いの輪。
楽しむなら、かおるさんも一緒じゃないと嫌だった。