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【HQ】繋がる縁の円

第15章 お弁当


‐りんside‐

残っていた仕事を終えて会社から出ると、目の前で嫌な空気が流れている。
まだ、社内には人が居るし、誰かに見られたら月島くんの立場が危うい。

だって、若いのに有能だから、ただでさえ僻まれる対象になってるのに。
会社の前でトラブル起こすなんて面白いネタ、放っておいて貰える筈はない。

「月島くん、帰ったんじゃ無かったの?…あら、お昼の。月島に何か用でしたか?」

白々しい演技だけど、近付いてから気付いたような顔をした。
私が来た事で、社内の人間に見られる可能性があると、月島くんも気付いたようで、その場から歩き去ろうとしたけど。

「ちょい待てって。お前、黒尾から連絡いってねぇの?」
「晩御飯は、かおるさんの店ってやつですか?それなら、各自で食事にしましょうって返しました。」
「それ、却下されたろ。黒尾、木兎経由で予約してたぞ。それで、木兎がノリノリで赤葦にまで連絡して、飲み会の予定になってる。
…んで、職場が近い俺が捕まえるように頼まれたんだが。」
「なんで、そこまでして…。」

すぐに引き止められて、2人で会話を始めてしまった。
不穏な空気はもうないけど、心配だったから黙って見守る。

「りらの為だろ。アイツ、お前等の飯作んの好きなんだよ。食べてる顔が見れないのが残念って、言ってたぞ。」

この声が聞こえた瞬間、月島くんが固まったような気がした。

「…行きます。」

少しの沈黙の後、迷うように瞳を動かしてから、覚悟を決めたように頷いている。

もう大丈夫そうだから、私は帰ろうと立ち去った。
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