第15章 お弁当
夏は、たった1日で満喫して。
いや、木兎さんに満喫させられて。
結局は秋紀が居ないと、どんな季節だろうが、どんな場所に行こうが、楽しめない事は分かった。
ついでに、要らない事まで分かってしまったから、私は余計な苦労を背負い込む事になってしまった。
それは、バーベキュー準備中の出来事。
私は料理の仕込みとか好きだし、慣れない人に手伝われるのは嫌で、1人で作業をしていた。
それは、一緒に居た皆も知っている筈なのに、何故か黒尾さんが私の元に月島くんを連れてきたのだ。
「俺等、同居してるっつー話は聞いたか?」
「聞きました。」
「そ?なら話は早いな。うち、家事は当番制なワケよ。んで、月島は料理とかした事がねぇらしいんだわ。」
なんだか、回りくどい事をしている気はした。
この情報から予測するに、月島くんに料理を教えろとでも言いたいんだろうか。
まぁ、私が人の言葉の裏なんか読める筈はないから違うだろうし、意味が分からないから最後まで話を聞くと…。
まさかの、予想の大当たり。
料理は得意だけど、人に教えるのは苦手である。
断ろうとしたけど、月島くんを置いて黒尾さんは他の準備をしに行ってしまった。
「月島くん。包丁握った事あるの。」
「バカにしないでよね。学校で調理実習くらいあるカラ。」
「そう。じゃあ、野菜切って。」
野菜を輪切りにしたりするくらいなら、出来るだろうと思っていた。
だから、それを任せたのに、月島くんは包丁を持った手がやたら力んでいて。
引いたりして切るのでは無く、ただ上から力任せに包丁を食材に押し込んでいた。
添える左手も、指を曲げないから、見ているこっちが怖くて。
すぐに私がギブアップして、月島くんのご飯当番の日には私が作ると約束してしまったのだった。
※新しいオリジナルキャラクターが登場します。
名前変換可能です。
変換なしの場合は、‘りん’になります。