第14章 夏を1日で楽しむプラン
どうして居るのか分からないけど、会えた事が嬉しい。
どうせ、周りの人は花火に夢中だから、注目される事はないだろうと、抱き締めた。
驚いたのか、秋紀が緊張したように固まったのが分かる。
だけど、それはすぐに解けて抱き返してくれた。
「…淋しい思いさして、ごめんな。」
髪を撫でる手が優しい。
嬉しくて、幸せで。
それを伝えたくて、顔を近付けた。
意図を理解してくれたのか、唇が重なる。
その途端、近くからシャッター音が聞こえた。
秋紀から離れて、音の元に目を向ける。
「皆さん、何をしてるんですか。」
近くにあった花壇。
そこにしゃがんで居たのは、本日行動を共にしていた面々。
黒尾さんの手にはスマホが握られている。
「何って、そりゃ、なぁ?ラブラブな2人を邪魔しちゃ悪いと思ってよ。」
「写真を撮った理由は何ですか。」
飄々として答えられて腹が立つ。
削除してやろうと思ってスマホに手を伸ばしたけど。
「今日、ここには来れないが、俺等の大切な同居人に送ってやりたいんだよ。お前が幸せだと、あの人喜ぶからな。」
こんな理由を述べられたら、許さない訳にはいかなくなった。
これ以上、何かを言う意味はない。
やっと、夏を満喫出来る気持ちになったんだから、花火を見ないと勿体無い。
それは、皆も同じ気持ちだったようで。
揃って空を見上げている。
本日の木兎さん企画、夏満喫プランは大成功で終了した。