第14章 夏を1日で楽しむプラン
足音が近付いてくる。
腕を掴まれて強制的に振り返らせられた。
「…どうして居るの。」
目の前に立つ人は、ここに居ない筈の、寧ろ東京に居ない筈の人で。
不信感で眉を寄せる。
相手の方も、不愉快そうな顔をしていて。
「君、黒尾さんから何も聞いてないの?」
冷たい視線と共に、言葉が降りてきた。
今の言葉で、黒尾さんが関わっているのは分かる。
だけど、本当に何も聞いていない。
首を振って、それを伝える。
返ったのは、溜め息だけだった。
掴んだままにされていた腕が引かれ、近くに停まっていた車に連行される。
「スーパー行くんデショ。バーベキューの買い出し。移動がてら、話してあげるよ。」
「運転出来るの。」
「田舎暮らしナメないでくれる?あっちだと、免許必須ダカラ。」
その人は当たり前のように運転席に座り、車を発進させた。
動き始めた車の中から見える、バーベキュー場。
「クーラーボックス、借りないと。」
そこで、思い出して声を掛けたけど。
「借りたよ。そっちで、君と合流する予定だったし。」
行動は先回りされていた。
まぁ、黒尾さん絡みなら本日の私達の動きなんか筒抜けだった訳で。
不思議でも何でもない。
不思議なのは、この人、宮城に居る筈の月島くんが、この場に居る事だけだ。
「…で?僕はドコから話したらいいの?」
「全部。」
「全部って言うのは、僕が東京に居る理由からってコト?」
「うん。」
BGMも何もない、静かな車内で始まる会話。
月島くんは、大きな溜め息を吐いていた。