第14章 夏を1日で楽しむプラン
‐みつside‐
テツローくんは、本当に聞いていなかったのか、私が落ち着いてきても話し掛けもせずにスマホを弄っていた。
ちょっとだけ慰めを期待してたけど。
考えてみれば、抱き締められたり、頭を撫でられたり、そんなの京治に見られたら、またホラーな展開になる。
慰めが無かった事を残念に思うより、無くて良かったと思い始めていた。
だけど、スマホのメッセージの通知音がした途端に抱き締められて。
意味が分からないまま、告白されている。
確かに、テツローくんみたいに、愛の言葉で縛ってくれた方がずっと良い。
そっちの方が、女として幸せである。
でも、京治のやり方が間違っていると思いたくない。
だって、京治は、私の中で絶対的な存在だから。
「テツローくん。相手にしてくれるのは嬉しいし、貶める言葉よりも、愛の言葉が欲しいのは事実だけど、さ。
私自身が、相手にして欲しいのが京治だけなの。
どーでもいい人の愛の言葉より、京治に貶されてる方が、私は良い。」
混乱した頭を整理して、やっと返事を吐き出した。
「…じゃ、赤葦の愛の言葉だったら?」
「最高に嬉しいけど、多分言わないよ。一生ね。京治って手段選ばないタイプじゃん?
テツローくん、よく分かってるから言ったでしょ?さっきの、傷付ける言葉じゃなくてって。
京治は、私を傷付ける事で縛ってる。京治が選んだ手段がそれなら、私は従う。」
本当に優しいテツローくん。
私に、京治の言葉の裏にあるものまで、教えてくれていた。
それが分かったら、もう大丈夫。
次から暴言を吐かれても、ニヤけちゃいそうなのは困りものだな。
「みつ、その顔、気持ち悪いからやめて。」
すでに、ニヤニヤしてしまっていたのか、表情を指摘される。
その声は、テツローくんのものじゃなくて。
「黒尾さん、みつから離れて下さい。ソレ、俺の女なんで。」
私とテツローくんの間に、腕が入ってきた。