第14章 夏を1日で楽しむプラン
‐赤葦side‐
りらから見せられた画面に並んだ、不細工な黒ネコ。
どことなく、黒尾さんに似ている気がして思わず笑ってしまった。
笑うと、気持ちが晴れるとはよく言うけど。
それは、本当の事のようで、胸の奥底に渦巻いていた黒いモヤのようなものが消えていった。
自分の口が、どうしてみつの前でだけ悪いのか分かっている。
みつを、他の人に奪われたくないから、彼女をレベルの低い女扱いして。
俺しか居ないと植え付けて、俺に依存させたい。
それは、みつを傷付ける方法だって事も、理解している。
今だって、きっと黒尾さんに泣き付いてる。
それを想像しただけで、晴れた筈のモヤが戻ってきた。
他の男と、進んで2人きりにしてしまった事を悔やむ。
「りら、やっぱり、買い物は黒尾さんと行ってくれる?」
俺のパートナーは、りらじゃなくて、みつだ。
お互いに別の異性と2人きりになる必要はない。
早足で戻ってきた先程のレストラン。
入った途端に見えたのは、黒尾さんの腕の中に収まっているみつで。
苛立ちはしたけど、この場で怒鳴る訳にはいかず、近付いた。
「…赤葦なんかやめて、俺にしとけよ?お前が毎回辛そうなの見てっと、俺が辛い。」
聞こえてきた声で、止まる足。
みつは、黙ったままで、拒否の仕草すらしない。
耐えきれず、無理矢理にでも引き離そうと手を伸ばしたけど。
「赤葦じゃなくても、みつとそうなりたい男は居る。俺なら、お前を傷付ける言葉じゃなくて、愛の言葉で縛ってやるよ。」
一番痛い部分を言葉にされて、再び固まってしまった。