第14章 夏を1日で楽しむプラン
赤葦さんの様子まで変だと気付いたのは、歩き始めてすぐだ。
着替えもせず、水着のまま園内を歩き回ろうとしていたから。
「赤葦さん、着替えましょう。せめて、上を着て下さい。」
腕を掴んで引き止め、プール側にある更衣室らしい建物を視線で示す。
休憩所になっていた、さっきのレストランを通った方が近いだろうに、わざわざプールの入り口から着替えに戻っていった。
待つ間に、スマホにメッセージが入ってくる。
相手は黒尾さんで、何か追加で買う物でも指示されるかと思っていたけど。
【戻ってくる時、レストラン入る直前で連絡頼む】
なんて事を頼まれた。
多分、みつの落ち込んでた理由を聞いて、何かをしようとしている。
了解、とだけ返信した頃、丁度良く戻った赤葦さん。
私の手の中にあるスマホに目敏く気付いた。
「りらが、暇潰しにスマホ弄りなんて珍しいね。」
「黒尾さんから、メッセージが来たので。」
探るような言葉と、画面を少しでも覗こうとする視線。
誤魔化しを知らない口から、正直な答えが出ていた。
「黒尾さんが、何て?」
もし、本当にみつに関わる事であるなら、赤葦さんに言った方が良いのか、言ったら悪いのか。
どちらか分からないでいると、またメッセージが入った。
【赤葦には内緒な】
【メッセの事、何か聞かれたら飲み物の追加頼まれたって事にしとけ】
連続で入ったメッセージ。
その後にはスタンプが何回も送られてきて、すぐに文字は画面から消えた。
「…飲み物、多目に買って来いと。こんなに連続でスタンプ送る意味あるんでしょうか。」
本題だった文字が、すでに見えない画面を見せる。
あまり可愛くもない猫が、頭を下げてお願いしているスタンプが並ぶ画面を覗いて、赤葦さんが唐突に笑い始めた。