第3章 その夜、お店にて
片付けが終わって、着替える前に外で待ってくれている木葉さんの元へ。
何故か、木兎さん達もまだ一緒にいたけど、用事があるのは木葉さんだけだ。
話し掛けると長くなりそうだから、気にしない事にした。
「着替えてきますから、もう少し待ってて下さい。」
声を掛けると、こちらを向いた顔。
だけど、視線は若干下を向いている。
眉を寄せて、機嫌が悪そうな顔をしたと思ったら、作務衣の胸元を掴んできた。
「谷間見えるぞ。肌着くらい着とけ。」
その言葉で思い出したのは、木兎さんや赤葦さんの不自然な視線。
覗きやがったな。
怒りを表す笑顔を作り、その2人の方に顔を向ける。
2人ともビクついたけど、本人等が何が悪いか一番分かっている訳で。
あえて、言葉には怒りを出さずに着替える為に裏方に回った。
「りらちゃん、ご飯行くでしょ?」
すでに着替えが終わって、帰り支度を済ませているかおるさんからの問い掛け。
本当に手伝わせるだけじゃ悪いという、かおるさんの好意で、私が店に出た日は食事付きである。
奢って貰うのは好きではないけど、断ったらかおるさんが手伝いを頼み辛くなると思って、今まではそれを受けていた。
ただ、今日に限っては待たせている人がいる。
一緒に良いよ、とかおるさんなら言ってくれそうな気がするけど、木葉さんは明日も仕事だろうし、早く帰って寝かせてあげたい。
「…今日は遠慮しま…。」
「いや!来て!来てくれないと困る!」
やけに強引な言い方で、断ろうとした声を遮られた。