第3章 その夜、お店にて
‐木葉side‐
いつかアイツと一緒に店をやりたい、とか。
付き合い始めたばっかの俺が言うには、重い話が頭を過る。
ある程度は酔っ払い慣れしていて、愛想があまりないながらも客の相手してる熊野を見てると、そんな事ばっか考えてる。
「なぁ、木葉。どこ見てんだよ?」
「りらに決まってるでしょう。邪魔しないでやって下さい。」
横並びに座っている2人の会話が耳に入って、顔をそっちに向け直した。
「…どうせ後で独り占め出来るし?変な気ィ遣うなよ。」
今はまだ、言えない言葉を隠すように思考を切り替えて、勝ち組らしく笑ってやる。
「このー!羨ましいヤツめ!もう、りらちゃん味わったんだろ?どうだった?」
「木兎さん、下品です。」
「だって、赤葦も気になんだろ?」
「…いえ、別に。」
悔しがってるワリに木兎は興味津々ってカンジで。
赤葦も、言葉では否定してても、ちょっと反応が遅れてた。
でも、何でコイツ等、すでにヤったって決め付けてんだ?
熊野が、ペラペラと話す事じゃねぇだろう。
「あー…。りらちゃんの胸元、見えたんだ?アンタ等。」
「アレは、覗くのが男ってモンだ!」
「りらの、あの格好は凶器ですよ。」
俺の疑問は、カウンターの向こう側にいる女将さん?らしき人の言葉であっさり解決した。
確かに着物タイプの服で、胸が見えそうではある。
近付いた時に、覗きたくなる気持ちは同じ男としてよく分かる。
多分、そこから見えたんだ。
昨晩の、俺が触れた痕跡。
所謂、キスマークってやつが。
「オイコラ、俺のモンだぞ。あの、おっぱい眺めて良いの、俺だけだから。」
それ見られてて、ヤってない、が通用する訳は無い。
ふざけた台詞で話を少しだけ方向転換させて、熊野の仕事が終わるまで会話をする事にした。