第14章 夏を1日で楽しむプラン
‐かおるside‐
赤葦が、ガチでキレている。
誰の目から見ても、分かりやすい怒りに怯んだのかナンパ男達は去っていった。
それでも、赤葦は収まらず。
こういう状態は、見るのも初めてだから、どうやって止めればいいか分からない。
「ナンパされるな、って…。それ、みつちゃんの意思だけで出来るもんじゃ…。」
「黙って下さい。」
正論を言ってみようとはしたけど、私の言葉に耳を傾ける余裕が無さそうだ。
こんな時、りらちゃんの話だったら聞くんだろうな。
でも、今は居ないし、どうすれば…。
悩んでいると、プールの方から大きな水の音がした。
驚いて、そっちを向くと、水から顔を出した光太郎。
私達のピリピリした空気には気付いてないようで。
「かおるちゃん!どーだった?カッコ良かったろ?」
この場に合わない、元気な声を聞かせてくれた。
空気を読んでくれないのが、役にたった。
こういう、無意識に雰囲気を明るくする光太郎は、やっぱり…。
「格好良かった…いや、光太郎は、いつでも格好良いよ!」
「だっろー?」
思ったまま、言葉を返すと満面の笑みを浮かべて。
プールから上がるなり、私の事を抱き締めにくる。
「木兎さん、ここ、公共の場です。目のやり場に困りますから、イチャつかないで下さい。」
でも、正気に戻ったらしい赤葦に止められてしまって、拗ねていた。
わざとらしく、唇を尖らせている姿が可愛くて頭を撫でる。
「かおるちゃーんっ!」
それで、すぐに立ち直ったのか、腕を広げていた。
また赤葦に怒られると思ったけど、それは無く。
「一緒に居ると、恥ずかしいので。俺達、休憩所に戻ってます。昼飯時には来て下さいね。」
寧ろ、呆れた様子で、みつちゃんを連れていってしまった。