第14章 夏を1日で楽しむプラン
‐みつside‐
京治を見ているのが恥ずかしくて、視線を飛び込み台の方から外した時だった。
「ねぇ、お姉さん達、2人組?俺達も2人なんだけど、男だけだと淋しいから遊んでくれない?」
普段、イケメンを見慣れた私からすると、相当レベルの低い顔立ちの男に声を掛けられた。
言葉を返すと、話し始めちゃって面倒な事になるだろうから無視をしていたけど。
「…あ、えっと。」
ナンパ慣れしていなさそうなかおるさんが、声を返してしまった。
「かおるさん、そろそろぼっくんの番じゃない?見てなくていーの?」
「あ、そうだね。光太郎のイイトコ、ちゃんと見とかないと後が五月蝿そう。」
「分かる!ぼっくん、構ってちゃんだもんね。大袈裟なくらい褒めてあげないとダメな感じ?」
ナンパ男達には気付いていない顔をして、無視の意思を見せ付ける。
かおるさんも、分かってくれたみたいで、然り気無く男性の名前を出しながら女2人の会話にしてくれた。
それなのに…。
「女のコ置いて、自分は遊び行っちゃうような男より、俺達のが良いよ?」
こっちにとって不愉快な台詞を吐いて、更に迫ってきてしまった。
こんなの、京治に見られたらマズイ気しかしない。
不安に思いながら、飛び込み台の方を見ると人が落ちてきた。
結構高い飛び込み台。
遠いし、太陽の位置の関係で逆光になっていたけど。
それが誰か、瞬時に分かる。
殆ど飛沫も上げず、綺麗に着水して水の中に消えた人。
中々、浮いてこなくて心配していると、私達の目の前に、手が現れる。
「…みつ、ナンパされるなって言ったと思うんだけど?」
プールサイドに手を付き、上がってきたその人は、濡れて張り付いた髪を掻き上げながら低い声を出した。
何この、ホラーみたいな展開。
ナンパされるな、じゃなくて、着いていくな、しか言われてない。
そう思ったけど、お化けにあったような恐怖を抱いて、声には出せなかった。