第14章 夏を1日で楽しむプラン
‐赤葦side‐
木兎さんに付き合うのが面倒だとか、思っていない。
この人は、人の話を聞いてくれるタイプではないし、初めから一緒にやらされると思っていたから。
ただ、みつから目を離すのは不安だった。
自分に似合うものが分かっている彼女は、ネイビーに白のドット柄のビキニを着ている。
下品にならない程度に晒されている白い肌が、濃い色の水着のお陰で際立っていて。
ただでさえ、見た目が良いから注目を浴びていたのに、放っておきたい訳がない。
少しでも視界に入れておこうと、階段を上がる最中も目で追う。
遠くでも目が合った気がして、合図を送るように手を振ってみたけれど、振り返してくれる事は無く。
イラッとして、目を離してしまった。
飛び込み台の頂上近く。
順番待ちで並ぶ列に混じった頃。
やっぱり気になってはいた訳で、見てしまった地上の彼女。
近くには、見知らぬ2人組の男が居て、何かを話し掛けられているようだった。
恐れていた事態が起こっていて、すぐにでもみつの元へ行きたかったのに。
運が悪く、順番待ちの列は俺達の後ろにも、かなり並んでしまっていて抜けるのは難しそうだった。
もっと、早く気付いていれば、列に並ぶ前に階段を下りれたと言うのに。
目を離した自分を恨んでいる最中も、列は進んで。
「お、次だぜ?俺が先に行って良いだろ?」
1つ前に居る木兎さんから、確認の声が聞こえたけど首を振って拒否をする。
「すみません。先に行かせて下さい。木兎さんの後じゃ、俺が霞んでしまいますから。」
1秒でも早く、地上に、彼女の元に行くなら飛べば良い。
木兎さんなら、この程度の事を言えば譲ってくれるだろう。
「そーかそーか!やっぱ、カッコイー俺の後じゃ、赤葦もやりづらいもんな!」
思った通り、単純な木兎さんはあっさり先に行けとばかりに道を空けてくれた。
飛び込み台の端に立つと、下では、まだみつ達が絡まれているのが見えて舌打ちをする。
監視員の合図、笛の音が聞こえると、足を踏み出し、水面に向かって落下した。