第14章 夏を1日で楽しむプラン
これから始まるのは、お説教である。
それくらい、いくら鈍い私でも分かる。
覚悟を決めて、言葉を待っていた。
だけど、聞こえてきたのは溜め息だけで。
「…怒らないんですか。」
予想外の事が起きてて、疑問を口に出した。
黒尾さんは、驚いたような顔をしている。
「お前、怒られるような事したって分かってんの?」
「ナンパを、ちゃんと断らなかったので。」
「分かってんなら、良い。着いてってないから怒られる理由が分からない、とか言うかと思ったんだがな…。」
昔なら、きっと、そう言い返した。
でも、今は皆のお陰で、少しずつでも人の感情が分かってきている。
今の場合、はっきり断りもせず、ナンパ男に話し掛けられ続けた私が悪い。
強引に連れ出されたら、男に力で敵う筈がないから、黒尾さんだって心配してくれたのだろうし。
秋紀が、もし見ていたら、彼氏が居るって言いたくなかった、とかマイナスに考えて泣かれるような事だ。
結果論として、何も無かったから別に良い、なんて許す方の台詞で。
人を、一番大切な秋紀を、悲しませるような事をした私が、間違っても言ってはいけない。
こういう時、言うべき言葉も、私は分かっている。
「心配掛けて、ごめんなさい。次からは、断る努力は致します。」
怒られる理由を理解して、反省している意思表示。
それが、黒尾さんの中でどう変換されたのか分からないけど、何故か目元を押さえている。
「あの、人を理解するのが苦手なりらが…。こんな事を言うまで成長するなんて…。」
感極まったのを表したいのか、涙を拭うような仕草をしていた。
「親ですか。」
「…親は行き過ぎだろ。お兄チャンって言いなさい。」
突っ込みを口から漏らすと、小芝居を止めて、今度はふざけ始めた。