第14章 夏を1日で楽しむプラン
プールに行っていた4人は、先に休憩場所を確保すべく席を取りに来たらしい。
どうやら、何か食べないと悪いと思ったのは私だけで、ここはプールの休憩所を兼ねていたようだ。
それなら、気まずく思う事もなく長居をさせて貰うとしよう。
さっきの倍増しで、しつこくプールに誘ってくる木兎さんは笑顔で撃退して。
貴重品とかを私達が預かる名目で、この場に残らせて貰った。
少々の間だけど騒がしくしていたのに、一言も喋らなかった黒尾さんが気になって目を向ける。
頬杖を付いたまま、目を閉じていた。
本当に、お疲れだったんだな。
木兎さん、自分が楽しい事は誰でも楽しいから、時間を共有したいタイプなのだろうけど。
いい大人なんだから周りの都合も考えてやって欲しいものだ。
今回、一番の犠牲者は黒尾さん。
このまま眠って、体力を回復してくれれば良い。
そっとしておくと決めて、少しだけ席を離す。
「ねぇ、彼女。彼氏、寝ちゃってんの?」
やる事もなく、ただ周囲を眺めていると掛かる声。
「…彼氏じゃない。」
知らない声だから、無視をしようとも思ったけど、否定はしたくて、つい言葉を返す。
それが、会話をする気があると思われたようで。
「彼氏じゃないなら、俺とひと夏の恋、してみない?」
ナンパをされた。
確かに、夏満喫プランで来ている訳だけど、こんな夏を体験したい訳じゃない。
その前に、私は秋紀以外に恋する気はない。
否定したい事はしてしまったし、もう話すつもりは無いと顔を逸らして無視を決め込んだけど。
諦めてはくれず、延々と口説かれる羽目になった。