第3章 その夜、お店にて
一応は、この店の中では店員と客。
木葉さんだけ贔屓する訳にはいかず、飲み始めた3人を眺めながら、作業をしていた。
「ね、りらちゃん。今日はもう上がっていいよ。彼氏の隣、行きたいでしょ?」
小さな声で、かおるさんが気を遣ってくれたけど首を振る。
また他にもお客さんが入ってきた事もあって、ちょっと忙しいのに、上がるのは悪いし。
それに、眺めていたのは、木葉さんの隣に行きたいからじゃない。
この3人が、一緒にいてくれる事が、ただただ嬉しい。
私の所為で離れて、私の為にまた繋がってくれた、3人を引き離したくない。
私が入ったら、中心が私になってしまうから、今はこのままがいい。
木葉さんが、私達の絆を否定したくないように、私もこの人達の輪を乱したくない。
内容までは、聞き取れないけど雰囲気で険悪でないのは分かって。
自然と笑顔が浮かんでいた。
そのお陰なのか、今日はお客さんから一杯ご馳走される事が多く。
更には、ご馳走してくれたお客さんに絡まれ。
お店が閉店する時間になった頃には、酔っ払いはしていないものの、疲れはててしまった。