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【HQ】繋がる縁の円

第14章 夏を1日で楽しむプラン


その海の家レストランは、何軒かの店が同じ施設に入っているフードコートだ。
私が求めている形態を瞬時に把握出来る部分は、流石黒尾さんである。

そこで良いと示すように頷いて、足を進めようとすると、肩が引っ張られた。
正確に言えば、肩に掛けていた荷物の紐を掴まれた。

「これ、水着だろ?俺が持っといてやるよ。」
「…遠慮します。」
「女にデカい荷物抱えさせとくの、紳士な俺が許す訳ねぇだろ。ほら、寄越せって。」

強引に荷物が肩から奪われる。
相変わらずふざけた事を言っているけど、何を返しても無駄そうだから黙って目的の場所に向かう事にした。

すぐに着いたその施設。
内装が、本当に海の家らしく浮き輪やらビーチボールやらが飾られている。
いや、飾られているんじゃなくて売られている。
値札が付いている。
園内にプールがあるから、売れてしまうんだろうな、高い遊園地値段のものでも。

「お前、何か夢がねぇ事考えてね?」
「あぁ、遊園地って、商魂逞しいな…と。ほら、浮き輪が、こんな値段で…。」
「こういうトコ来たら、現実忘れようぜ?金の事ばっか考えるとか、りらちゃんヤラシイー。」

計算は苦手でも、金銭関係には五月蝿い自覚はある。
この値段を見たら、現実に引き戻されて当然だ。
その前に、夢を見てないけど。

忌々しげに値札を眺めていると、大きな手がそれを覆った。
値段が視界から奪われて、思考を強制的に終了させられる。

「はい、ここはもう見ない。ほら、何か少し食ってまったりしようぜ?」

肩を押されてその場から離れ、幾つか並ぶ店の方に歩いた。
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