第3章 その夜、お店にて
揃って木葉さんを見ているものだから、少し引いているのが分かる。
「…え?いきなし何?俺、何かしたか?」
「いえ、何も。いらっしゃいませ。」
取り合えず、席へ促すように木兎さんの隣を手の平で示した。
まだ、何か伺うように恐る恐る席に着いた木葉さん。
「おぅ。木葉!何飲む?ビールか?」
「俺、ビール苦手なんだよ。チューハイ、薄めで。」
「りらちゃん、チューハイ!炭酸薄めで!」
「オイ!濃いの飲んだら、ぶっ倒れんだろ!」
一番最初に調子を取り戻したのは木兎さんだ。
木葉さんの注文を、違う意味に取っている。
それで、普段の空気に戻って安心した。
私は、木葉さんがアルコールに弱いのを分かっているし、隠すようにして炭酸水だけを注いだグラスを差し出す。
「…どうぞ。」
木葉さんだけに聞こえるように、炭酸水です、と小さく付け足した。
有難う、を示す為なのか、ウィンクを返される。
それだけで、少し脈が早くなる気がするのは、相当この人を好きである証拠だ。
つい、また見詰めてしまって、照れたように笑っていた。