第13章 お食事会
‐木葉side‐
俺の、やりたい事。
いつか、店を持つ事。
りらと、再会するまでは、付き合うまでは、考えすらしてなかった、独立という道。
自分の店を持って、りらと2人で営んでいきたい。
その為には、色々とクリアしてかなきゃならない問題があって。
今の仕事、世話になってきた店を辞める事やら。
仕入れのルート等々を1から築く事やら。
すぐに、実行出来るもんじゃない。
勿論、色々な苦労もするだろう。
やりたいって気持ちだけで、簡単に出来るなら世の中は成功した起業家だらけだ。
その苦労を、りらには味わわせたくない。
婚約者って立場は、実質的に夫婦に近いもんがあるらしく。
2人の為にした事で負債を作れば、りらも被害を受ける可能性がある。
だから、まだ結婚の予約である婚約すら、しない。
その、婚約を更に予約だけさせて貰う。
流石のりらでも、言葉の意味は分かったようで。
「…嬉しい。有難う。」
涙を手で拭いながら、笑顔を見せてくれた。
りらの、不機嫌じゃない方の笑顔は綺麗過ぎて、ちょっとした理性くらい楽に吹き飛ばす。
「な、キスしていい?」
ここが、りらの実家である事なんか忘れてしまっていた。
言葉も無く、コクンと頷くだけの許可の仕草も可愛くて、キス以上もしたくなったが。
「…アンタ等、皆を待たせて何やってんすか。」
唇が触れ合う前に、よく知った声が聞こえて、キスすら出来ず。
甘い2人の時間は強制終了となった。