第13章 お食事会
秋紀が言うには、父から歩み寄ってきてくれているのに無下には出来ず、誘われて、この家に来たらしい。
初めは、女にだらしがないと父が思い込んでいて、酷い言葉ばかり掛けられたようだけど。
言い返しもせず、父の怒りを受け止めて、信用して貰えるまで毎日でも通う、と約束したらしい。
最近、帰りが遅かったり、酒臭かったりした謎は解けた。
私に話したら、心配するか、父の勝手な行動を怒るから言えなかったんだろう。
とにかく、私と距離を置きたい訳じゃなくて良かった。
本日の事は、みつが赤葦さんを家族に紹介するなら、自分にも挨拶をさせてくれ、と秋紀から申し出たらしい。
殆ど毎日、家に来ては上がらせて貰っているから、それなりに信用されていると分かっての事だったようだ。
因みに、父が私を台所から遠ざけたのも、秋紀発案だった。
家庭の味じゃなく、秋紀がプロとして作る味を知って欲しいから、私には手伝わせたくない。
でも、秋紀が居ると知ったら私が台所に入る事も読めたから、敢えて隠したという事だった。
分かりやすいように纏めて話してくれて、大体の状況は理解する。
ただ、理解は出来ても、納得出来ない部分はあった。
「…秋紀。勝手に私の家族に挨拶とか決めないで。」
笑顔を作り、低い声を出して、不機嫌を完全に表す。
だけど、秋紀の方は笑っていた。
「プロポーズも、まだなのにって?確かに‘挨拶’だと、そっち考えるよな。
だが、今回は赤葦達と同じ目的で、お付き合いしてますレベルの挨拶だから、気にすんな。」
秋紀の手が私の頭を撫でて、髪を伝ってから、左の肩、腕、手に触れる。
指先まで移動した指が、薬指を摘んだ。
「りら、俺、お前と付き合い始めた時から、将来の事、考えてるぞ。でもな、今は、やりたい事があるんだ。
いつか、ちゃんとしたプロポーズもするし、正式な挨拶にも来る。だから、ココ、予約の予約させて?」
持ち上げられた手。
薬指の付け根に落とされる唇。
嬉しくて、自然と涙が溢れた。