第3章 その夜、お店にて
帰るのは、止めよう。
もう少し、この人と一緒にいたいと思った。
作務衣のまま戻った私を見て、木兎さんも赤葦さんも安堵している。
私を怒らせると、地味に仕返しをするの、分かっているからだろうな。
カウンターの中にはかおるさんと私。
カウンターの席には木兎さんと赤葦さん。
他の客がいない今は、普通に雑談をして過ごしている。
その内容は…。
「りらちゃんの彼氏って、どんな人?」
「木葉か?俺の次にイイ男だ!」
「悪い人ではないですよ。」
「…優しい人です。」
木葉さんの事だった。
かおるさんは、本当に興味を持っているようだ。
「ごめん。それじゃ、ぼやけたイメージしか浮かばない。…あ、顔は?誰かに似てる、とか。」
それを聞いて、カウンターの席に座る2人と顔を見合わせる。
「…狐?」
「ぶっは!りらちゃん、彼氏相手にヒデーな!でも、木葉はキツネだな!」
「…確かに、狐顔ですね。」
「えー…。狐顔ってイイ男?性格悪そうなイメージなんだけど…。」
そんな話をしていると、店の扉が開いて。
「…あ、マジで狐だ。」
この、かおるさんの呟きの通り、ご本人様が来店した。