第12章 遭遇しちゃ駄目なやつ
父の前に、秋紀が出る。
木兎さんの頭に手を持っていき、強引に頭を下げさせた。
「昨日は、友人が失礼な事をしてすみませんでした。コイツ、感情的になると止まらない所があるんで、許してやって下さい。」
秋紀も、しっかりと頭を下げている。
先に謝られては、怒鳴り散らして追い返す事が出来なくなったのか父は無言のまま2人を見ていた。
「…その友情に免じて、彼は許すとしても、だ。りらとの交際は許さないと言ったら?」
許しの言葉を貰って、早速頭を上げる木兎さん。
重い台詞を落とされた秋紀は、下を向いたままだ。
「言い訳は、しません。りらさん以外の女性と2人きりで居た、誤解されるような事をした。それは、事実ですから。」
やっと、秋紀が顔を上げる。
いつもの軽そうな感じは微塵も無い、真剣そのものの顔をしていた。
「俺の事を許せなくても、認められなくても、構いません。今は、りらさん自身が自分で築いた、皆との絆を認めて頂ければ、良いです。」
「それは、りらとは別れるという事か?」
木兎さんですら、オロオロとしてしまって入る事が出来ない空気の会話。
その、ピリピリした雰囲気を壊すように秋紀は、笑った。
「別れません。今は、認められなくても、いつかは認めて貰います。…また、お邪魔させて頂きますね。」
今の状態で、父と話を続けても認められない。
それを分かっているかのように話を締めて、秋紀が家から出た。