第12章 遭遇しちゃ駄目なやつ
秋紀は、父に直接何かをした訳じゃない。
木兎さんだけだと、拗らせそうだと言う意見には同意するけど、喋ってくれなくなる程、不機嫌になるなら来てくれなくて良い。
そんな事、思っていても言う事は出来ずに時間だけが過ぎてしまって…。
実家の前に2人と共に立っている、現在。
インターフォンを押す勇気が無く、迷っていると横を手が通り過ぎて。
「父ちゃんに会わねーと、何にもなんねーだろ?」
木兎さんが、あっさりと音を鳴らした。
中から聞こえる足音。
扉を開けて出てきたのは母で、何も知らないのか寧ろ歓迎モードで家の中へ促される。
だけど、許される前に上がり込んだら、それだけで怒りそうな人が相手だ。
家の中には入る訳にはいかない。
「お父さん、呼んで。」
促されるまま、上がろうとした2人を手で制止して玄関に留まる。
母が、父を呼びに行ってから数分。
超絶不機嫌顔の、その人が玄関に現れた。
「家に来たのなら、そちらと縁を切るという事だと思ったんだが?それとも、こちらに絶縁状でも置きに来たか?」
どちらか選べというのは本気だったようで、一緒にいる2人を見るなり低い声で私に選択を迫る。
高圧的な言い方に腹が立って、やっぱり謝らずに絶縁してやろうと思ったけど。
「りら、選ばなくていーぞ。血の繋がった家族も、絆で繋がった皆も、お前にとって大事なもんだ。」
私が言葉を吐く前に、秋紀に止められた。