第12章 遭遇しちゃ駄目なやつ
‐木葉side‐
店から出たらすぐに聞こえてきた声。
それは、かおるさんのもので、内容も大体は聞き取れてた。
結婚って言葉を何回も使ってんのは、有難いところで。
ソレで、意識しちゃくれないか、なんて考えたが…。
全く、意識しねぇどころか、わざわざその言葉を隠しやがった。
ド真面目で、喋ると素直なりらが全容を話さず、敢えてそれだけ切り取ったのは、その話は避けて通りたい表れだ。
本来なら、木兎と謝罪じゃなくて、りらと挨拶しに行きたかった。
ちょっとは考えてくれてたなら、そう言いたかったが、今の状態で口に出したらクッソ重い。
気分は落ち込んでいっても、実際プロポーズ失敗したワケでもなく。
今はヘラヘラとしてやり過ごすしか出来ない。
明日の事も決まり、りら達はこれから飯のようで。
一緒にと誘われたが、今酒なんか飲んだら泣き入るのは分かり切ってるから断った。
そうすると、こっちの気持ちは何一つ分かってないりらも飯は止めて一緒に帰る事になる。
いつもなら、一緒に居られるだけで幸せで。
この時間だけあれば良いとさえ思っているのに、気分が晴れず。
帰り道でも、家に着いても、寝る直前までも、殆ど会話をする事無く、今日一日が過ぎて行った。