第12章 遭遇しちゃ駄目なやつ
かおるさんの説教は続いている。
その中に、結婚、という言葉がこれでもかというくらい盛られていた。
あれ、もしかして。
これは私の結婚を心配しているというより。
告白の次の瞬間に、求婚したくせに、その後の話を全くしない木兎さんに、意識でもさせようとしてるのか。
いや、こんなやり方じゃ、木兎さんが気付く訳はないと、分かっていそうだ。
じゃあ、何で。
「かおるちゃん、その辺にしとけよ。りらちゃんは、悪くねぇよ。悪ィの、父ちゃん殴っちまった俺じゃん。」
「分かってんなら、りらちゃんの結婚の為にも光太郎が謝りに行きなさい!」
疑問が頭に浮かんだけど、口を挟んだ木兎さんによって謎が解けた。
木兎さんに結婚を意識させたい訳じゃない。
自分の事を考えて、こんな事を言っていた訳じゃない。
確かに、手を出したのは木兎さんだから、私だけ謝りに行っても意味がなくて。
真っ向から怒ったら、反抗して拗ねて、絶対に非を認めない木兎さんに、私を責めるようにして、止めるさせるついでに非を認めさせたかったんだ。
「分かったってば!かおるちゃんも、りらちゃんのコトになると怖ぇなー。」
「当たり前でしょ?りらちゃんって、不器用だけど素直でさ。護りたくなんじゃん。
りらちゃんが自分から頼るの苦手なら、大きなお世話だろうが、私は勝手にやる。」
「それ、分かる!りらちゃん、可愛いーもんな!俺もりらちゃんの為なら、あの父ちゃんにだって謝ってやる。」
私の為に、色々やってくれる人がいる。
ここまで、大っぴらに言われると少し恥ずかしいけど嬉しかった。