第12章 遭遇しちゃ駄目なやつ
‐木葉side‐
頭に過るのは、最悪、の二文字。
アイツ等は、たまに店の客とも飲んだりしてるから、知らない人が居ても気にしなかったのが悪い。
あの真面目なりらが、俺に気付いてても声を掛けてこなかった理由を考えるべきだった。
「大変な事になっちゃったねぇ…。」
「誰の所為だよ!」
呑気な顔をしている幼馴染みに腹が立つ。
強引な女だから、追い払ったくらいじゃ効果ナシで。
無視しても勝手についてきやがるし、店に入ったら俺の連れって顔するし。
そうしたら、店員は当たり前のように同じ席に案内するよな。
諦めて、りらが来るまで相手してやろうと思ったのが、そもそも間違いだった。
さっきの、木兎の言葉からすると、あの男性はりらの親父。
俺が、一番嫌われたらマズイ相手。
とにかく、りら捕まえて、実家の場所聞き出して、土下座でも何でも…。
「早く、追い掛けた方が良いんじゃない?ここ、迷惑料って事で私が出すからさ。」
今後のやる事を考えてると、変わらず呑気に話し掛けられて、苛々が増す。
「ついて来んなよ。これ以上引っ掻き回したら、お前の旦那に昔の写真持ってくぞ。」
コイツと俺が、どうこうなりはしねぇのは、こういう理由があるから。
人のモンに手ェ出す趣味はない。
ただ、それを知ってるのは本人達だけで。
りらの父親が、多大な誤解をしてるだろう事は分かっている。
だからってコイツが誤解を解いてくれる訳はねぇから、せめて今より悪い状況になるのだけは避けたい。
念押しに、脅しを加えて立ち上がったが。
「それやったら、アキちゃんの彼女に昔の写真見せるわよ?」
当たり前の反撃を食らってしまった。
それだけは、マジでイヤで固まる体。
「冗談よ。早く行ったら?」
急かすように背中を叩かれて、やっと動く事が出来た。