第12章 遭遇しちゃ駄目なやつ
恐る恐る、父の顔を見る。
眉を寄せ、目に見える怒りを表し、小刻みに震えていた。
「りら、お前も大人だ。交際相手の顔すら知らないのは心配だったが、認めるつもりではあった。
…だが、あの男なら反対だ。今すぐ別れなさい。」
「…嫌。」
「仕事を理由に他の女と居て、お前に隠しもしない。そんな男が信用出来るのか?」
父の言い分は分かる。
他の女が一緒に居ても隠さない彼氏と、それを見ても動じない彼女。
真っ当なお付き合いをしているように見える筈がない。
「それとも何だ?お前は、愛人でも…。」
「お父さっ…!」
言い返す事なんか出来なくて、ただ聞いていたけど、私にとって、許せない言葉が出てきて。
頭に血が昇って叩こうと手を振り上げる。
でも、私の手が当たるよりも早く、父の顔を殴った手があった。
「いくら、りらちゃんの父ちゃんでもな。俺のダチ、バカにすんじゃねぇよ!
木葉は、浮気出来るキヨウさねぇし!りらちゃんのコト、めっちゃ大事にしてんだよ!」
木兎さんが、怒鳴り散らしている。
うちの父も、身長は高いんだけど、ガタイでいえば確実に木兎さんの方が良くて。
「りら、実家と縁を切るか、コイツ等と縁を切るか。考えなさい。」
敵わないと気付いたのか、捨て台詞のような、脅しのような言葉を残して店から出ていった。