第12章 遭遇しちゃ駄目なやつ
何とも有難くない展開だ。
「りらちゃん、席空いてるってよ。良かったな!…後で木葉来るか?」
木兎さんは、私が不機嫌な理由を店に入れないからと勘違いしたようだ。
しかも、今は一番出されたくない名前を口に出してきた。
「来ません。」
来るんじゃなくて、もうすでに店内に居るのだ。
後から来るなら、アレは誰だ。
秋紀が分裂でもしたか、クローンでも居なきゃ有り得ない。
あぁ、あれ。
ドッペルゲンガーでも可。
それなら、一緒に居る幼馴染みさんも、分裂かクローンかドッペルゲンガーだな。
気を逸らしたくて、有り得ない馬鹿みたいな事を考えている内に、木兎さんが店員さんに人数を告げていた。
「あり?木葉居んじゃ…んぐっ!」
「光太郎!」
店内に案内されると、早速その人の存在に気付いて声を出そうとして。
同じく気付いたかおるさんが、無理矢理口を塞いだ。
でも、時すでに遅く。
父の視線が店内を巡っている。
木兎さんは、かおるさんに口を塞がれているから、教える事は出来ないけど。
「りら、木兎、かおるさん。」
状況を分かっていない秋紀が、こちらに気付いてしまって。
本当に、遭遇してはいけない場面で、父と彼氏を会わせてしまう、最悪の事態が発生した。