第3章 その夜、お店にて
かおるさんに言い返して、気まずくなった、あの日。
私が、まだ未練あるような発言をした事を木兎さん達に暴露し。
それで、木兎さん達が再会計画を企てた。
作戦会議は、この店で私がいない日に行われていたらしい。
学園を見に行く話も、赤葦さんが私を誘導するような言葉を吐いたのも、全て作戦の内で。
かおるさんに筒抜けだったようだ。
つまり、昨日の時点で、私に彼氏が出来た事を知っていた。
分かってて、言いづらくなるような、木兎さんに告白したなんて嘘を吐くのは酷くないか。
「…もう、お客さん引けたので私帰ります。」
最高の笑顔を作って、着替えようと裏方に向かう。
「りらちゃん、ごめん。知ってるの、黙ってて。」
「そこには怒ってません。嘘、吐いた事を怒ってます。」
「嘘?」
ついてきた人を無視は出来ずに、正直に話をした。
でも、本人は覚えがないような顔をしている。
「木兎さんに告白したの、嘘では?」
「…いや、それはホント。返事は聞いてないし、友達で良いから、私を知ってって話してる。」
言ってしまって、後悔した。
勝手に嘘と決め付けて、勝手に苛々して、当たり散らすなんて最低だ。
「…すみません。」
「謝らないでいいよ。私も悪いしね。」
こうやって、人の非を責めずに許してくれるなんて。
かおるさんは、本当にいい人だ。
幸せになって欲しいと思う、大切な人がいつの間にか増えていた事に気付いた。