第12章 遭遇しちゃ駄目なやつ
‐木葉side‐
別に、コイツと居た所で怒りはしねぇのくらい分かってる。
俺としては、ちょっとくらい妬いて欲しいと思うが、りらには無理なのも分かってる。
どうせ、今もこの言い合いが終わるのを、仲が良いんだな、くれぇの微笑ましい気持ちで待ってんだろうな。
長く通話のままにしていたスマホに視線を落とすと、予想外にも電話は切れていて。
更に、メッセージまで届いてやがる。
【今日は店に来ないで。後で秋紀の家に行く】
喋り方と大差ない、温度を感じられない文章。
もしかして、初の嫉妬か、これ。
何気に嬉しいんですけどー。
【飯は?】
【かおるさんと行ってくる】
【了解!待ってる】
ちょっとのやり取り。
最後には、ハートマークのスタンプを送る。
りらが嫉妬なんて、珍しい事をしてくれたから、嬉しくて顔が緩んだ。
「うわ。アキちゃん、ニヤニヤしてる。キモい。…何があったの?」
コイツのお陰で、りらが嫉妬してくれた。
表情を指摘され、更に悪口みたいな事を言われても、今回はスルーしてやる。
「今日は、店来んなってさ。」
「え?マジ?怒ってる?」
「さぁな?俺、彼女待ち伏せすっから、お前は帰れよ。」
「私、居たらマズい?一緒に謝ろっか?」
「火に油注ぐような事すんなよ。じゃーな。」
かおるさんと飯なら、多分いつもの居酒屋だ。
そこで待ってりゃ、高確率で会える。
素直に家で待つって選択肢は無く、その居酒屋に向かった。