第12章 遭遇しちゃ駄目なやつ
こうなったら、秋紀の方に来れない理由が出来た事にして貰った方が良い。
せめて、父単品の今じゃなく、両親揃っている日に家に挨拶に行かせて貰いたい。
そっちの方が重いのは分かりきっているけど、母の方がまだ柔軟だからマシだ。
「かおるさん、すみません。電話してきます。」
何組かのお客さんが帰り、閑散としてきた頃を狙って声を掛け、裏の部屋に入った。
何て言えば良いかなんて分からないけど。
取り合えず、連絡だけはしなきゃならない。
慌てて掛けた電話。
すぐに、通話の状態になって。
『りら?どうし…『やっほー!彼女ちゃん。』』
秋紀の声に、女性の声が挟まれた。
この声には、聞き覚えがある。
秋紀の、幼馴染みだと言っていた人だ。
『あのさ、私ね…『オイ!勝手に話してんじゃねぇ!』』
スマホを奪われたようで、その女性から話が始まる所で、また秋紀の声に変わる。
『良いじゃない、ちょっとくらい。』
『良くねぇよ!大体、彼氏の女友達と仲良くしたい彼女なんか居るか!』
電話口から、向こう側で言い合いしている声が聞こえてきた。
それは、結構長く続いて私の話を聞いてくれそうにはない。
だけど、逆に都合が良い状況だと気付いて電話を切った。