第3章 その夜、お店にて
何か、1人で悩んだのが馬鹿らしい。
2人が普通にしてるなら、私が気を揉む必要がない。
かおるさんが告白したなんて、聞かなかった事にしてしまおう。
ビールを注いで、木兎さんの前に出す。
「サンキュ。あ、アレあるか?赤葦の好きなやつ。」
「菜の花の辛子和えでしたらありますよ。」
カウンター越しに会話するのも、いつも通り。
…だけど、視線が私の顔より下を見ているような感じがするのは、気の所為だろうか。
まぁ、何も言われないから、こっちから突っ込む事もない。
他にお客さんもいる事だし、木兎さんだけを相手している訳にもいかず。
木兎さんのオーダーはかおるさんに任せた。
それから数分の内に、赤葦さんが来店して。
少し話をした時に、やっぱり顔より下を見られた気がしたけど、忙しかった事もあって、そんなのはすぐに忘れた。
そして、木兎さんの来店から1時間程して。
他のお客さんは引いてしまって、客は木兎さん達だけになる。
「ねぇ、りらちゃんの彼氏遅いね?」
楽しみにしている顔のかおるさんが聞いてきた。
多分、酒に弱いからわざと時間を遅らせてる。
木兎さんに飲まされるの、嫌なんだろ。
「楽しそうですね。」
そんな事、言ったら木兎さんはいじけるだろうから、別の言葉を返した。
「だって、この超絶美女のりらちゃんが、何年も好きだった男でしょ?興味あるじゃ…ん?」
「何で、私がずっと片想いしてた相手だと知ってるんですか。」
別に、カマをかけた訳じゃない。
なのに、勝手にボロを出して、その後はペラペラと私をハメた事を話してくれた。