第11章 裏で動いた恋模様
‐みつside‐
ケージくんより、少し遅れて席に戻る。
お父さんは、私の顔を見るなり眉を寄せた。
分かってる。
結婚して、家を出たのに1年くらいで戻ってきた私を厄介者扱いしてる事くらい。
「りら、赤葦くんと組みなさい。」
その上、お気に入りであるケージくんと、姉ちゃんを付き合わせたがっている。
姉ちゃんには、ちゃんと彼氏が居るのに。
この人と、同席なんて無理だ。
「すみません。先輩の恋人とペアを組むのは、申し訳ないので。みつさんと組ませて下さい。」
その場から離れようとしたけど、ケージくんに手を掴まれた。
着席するように視線で椅子を示されて、渋々そこに腰を下ろす。
結構頑固で、自分が決めた事を譲れないお父さんが、拒否をされてケージくんを怒りやしないか心配したけど。
「りら。」
「はい。」
「そんな男が、いるのか?」
「いる。」
「何で、紹介しない?」
「…ごめんなさい。」
怒られたのは姉ちゃんだった。
未だに、親に反抗する事が出来ない姉ちゃんは、ただ謝っている。
親に紹介なんて、そんな重い事を自ら進んでやれるような姉ちゃんじゃないのに。
止めようと思っても、自分まで巻き添えくって怒られそうで、何も言えない。
「…熊野さん、俺の先輩です。悪い人で無いのは保証します。時期が来れば、挨拶に行きますよ。」
お父さんを宥めたのはケージくんだった。
流石のお父さんも、人前でこれ以上の恥を曝せないのか黙ってくれた。