第11章 裏で動いた恋模様
‐赤葦side‐
長く感じる沈黙。
それを、破ったのは…。
「…お飲み物、伺いましょうか。」
りらだった。
確かにここは、話をする為だけの場所ではなくて。
「…赤葦、生で良いか?」
「はい。」
「じゃ、生2つ。後、適当に摘めるもん出して。」
「畏まりました。」
更に、珈琲とかが出るような店でもなくて。
アルコールを摂ったら、感情的になりそうだとは思ったけど、それしか無いから仕方がない。
返事をして去ったりらの背中を見送る。
「なーに?やっぱ、お前はりらラブな訳?」
「そんな訳無いでしょう。」
からかう声に眉を寄せて、その元に目を向ける。
黒尾さんは、少しだけ驚いたように目を数回瞬かせた。
そして、柔らかい笑顔を浮かべる。
「何ですか、その顔。」
「俺な、お前の事心配してた訳よ。何年も、赤葦の中心はりらで。アイツが幸せになってくの、本当は辛いんじゃ無いかって。
今の、即答出来んなら、自分の気持ち、分かってんだろ?赤葦が、自分の手で幸せにしてやりたい女、居るだろ?」
この人は、情に厚い。
今の表情は、俺がりらを吹っ切れたから、安心したのだろう。
そんな人が、軽々しい気持ちで人の想い人に手を出したりしない。
みつに、手を出していないと確信が出来た。
肯定を口にしようとした時、タイミング悪くりらが飲み物を運んでくる。
テーブルの上に、グラスを置いた後、俺に向けて手を出していた。
その掌に乗っている、鍵。
「みつからです。赤葦さんに返してくれ、と。」
とても残酷な言葉を吐いて、受け取らずにいる俺の前に鍵が置かれた。